さんごの暮らし相談室 月と太陽

現代女性の〈心〉と〈体〉と〈関係〉の健康と豊かさ、主体性を応援する相談室です。

● プロフィール&こんにちは ●

翁川 花伊子(おいかわ けいこ)

大学で10年間講師を務めたのち、子どもの誕生をきっかけに「現代社会で女性がいきいきと生きる」ための野口整体・心理臨床・関係療法を学ぶ機会に恵まれ、自身のテーマに取り組む中で、関係心理療法・ソーシャルワーク・ボディワークの臨床を本格化、相談室を開業。

 

女性・カップル・家族のカウンセリング&関係コンサルテーション、心と関係の変容期のサポートをおこなっている。

 

ポストモダンと高度消費社会、近代核家族とマルクス主義フェミニズムを経た現代日本人に見合うよう、野口整体にユング心理学と現象学とを取り入れた「現代野口整体」を展開。

 

子どもの心と体の健康な育ちについて、西洋の児童精神分析と発達心理学、東洋の野口整体の子育て法から研究実践している。

 

人間のいのちの育ちを伝承してきたグリム童話や昔話の大切さに気づき、それらを現代的にアレンジすることを目指した雑誌『子どもとコミュニティ』の編集長を務める。

 

講座・ワークショップの開催、自治体における子ども子育て審議会委員、男女共同参画プラン推進会議委員などを務めるなど、女性と子どもをめぐるコンサルティング・コーチング・アウトリーチ活動をおこなう。

 

社会学者・見田宗介氏の理論に多くを学ぶ。好きなことは古いびん集め、古い着物集め、庭仕事、野草やハーブの活用。好きな言葉は「どんな葛藤も宝物に変わる、そのための錬金術はある」。

 

2008年 名古屋大学大学院社会環境学専攻科社会学講座博士後期課程満了博士(社会学)/現象学的関係療法家夫婦・家族カウンセラー精神対話士/専門社会調査士/日本学術振興会特別研究員DC&PD・日本福祉大学・椙山女学園大学・藤田保健衛生大学講師を歴任。

 

(共著)『いのちとライフコースの社会学』弘文堂

(共著)『社会福祉士 速習レッスン』ユーキャン

他、著書・論文・学会報告等多数。



こんにちは、よろしくお願いします

この相談室を開設する前、私は大学で研究・教鞭をとっていて、現象学的社会学という社会学の一分野を専門にしていました。

 

そもそも大学での専攻を決めるとき、社会学・心理学・哲学の3つの学問のどれを専攻するか、とても悩みました。当時から心理学に興味があったのですが、心の問題を個人の問題に還元する個人心理学には違和感がありました。なぜなら、私の悩みはいつも他者と関係していると感じていたからです。

 

「なぜ人は生きるのか」「なぜ私は生まれたのか」などの哲学的問題にも興味があったのですが、形而上学的なことを日常生活の中にどのように活かせるのか、疑問が残りました。

 

そこで、これらすべてを解決してくれそうな、社会学を専攻することに決めました。

 

私が社会学を学んだ時代は、ちょうど日本の社会学の黄金期ともいえる時代で、あらゆる優れた理論が出揃った時代でした。自己物語論、アイデンティティ論、フェミニズム、ジェンダー論、家族関係論、社会心理学、発達心理学、ポストモダン論、社会システム論、社会構造論、グラウンテッド・セオリー・アプローチ、ドラマトゥルギー論、ラベリング理論、構築主義、相互行為論、身体論、文化人類学、集合的記憶論、現象学的社会学などを、私はまるで乾いたスポンジが水を吸い込むように吸収しました。

 

大学2年生のときに、現象学的社会学者の西原先生の講義で初めて「間主観性」「現象学的還元」という言葉を知ったとき、「これだ!」と直観した、特別な日があります。A.シュッツの「関係性の網目」「相互同調関係」、W.ジェームズの「多元的宇宙論」、E.レヴィナスの「絶対的他性」など、どれもすべて日常生活世界のリアリティを科学的に説明する素晴らしい理論です。

 

大学院時代には女性支援をしているNPOにもかかわり、寿町でソーシャルワーカーをされたのちに大学に赴任された須藤先生に招かれ、政令指定都市のDV防止センター立ち上げ研究会の事務局を務めました。私はここで「女性相談」の深みについて知ることになりました。

 

その後、実父が癌になり、本人の意思で自宅で看取りました。自宅で父を看取るうえで一番難しかったのは、家族や親族たちを説得することでした。しかし、穏やかに安らかに息を引き取った父を見て、家族・親族は心から納得したようでした。残された人間のグリーフ・ケアは豊かなものになりました。このときの看取りの現象学的記述は、看護ケアの現象学を研究されている西村ユミ先生の研究会を通してまとめました。父が私に残してくれた大切な財産です。

 

戦後、人間が生まれる場所と死ぬ場所は、家から病院へと急激に移行しました。それまで、日常の中にあった生死が生活の中から切り離され、いのちの誕生と看取りについて正面から考えることが難しい時代がありました。近年は、高齢社会化とともに、人間の生命を尊重するターミナルケア・在宅医療も少しずつ進んできています。

 

少しだけ、博士論文の話をさせてください。博士論文では、「他者を理解することは可能なのか」という大きな問いを考察しました。これは私の人生をかけるほどの切実な問いでした。結論は、「他者を〈理解〉することはできない、という態度から始めねばならない」という、何ともすっきりしないものだったのですが、のちに出会うことになった関係療法において、自分が導き出したこの知見が関係療法におけるカウンセリング技術のひとつの鍵であることを知りました。「他者を〈理解〉することができない」からこそ、癒しをもたらす深い共感は生じるのです。

 

それから、東日本大震災が起こりました。私は関東で被災したのですが、多くの人びとにとってそうだったように、私にとってあれほどの驚愕体験は初めてのことでした。震源地近くで被災された方々のことを思うと、いまでも深い悲しみで胸が痛みます。関東の避難所にボランティアに行ったのですが、そこで目の当たりにしたのは、メディアで流れるような話とはちょっと違う現実でした。痛みの共感ということについて、また、支援ということについて、改めて深く考えるきっかけとなりました。

 

私自身の子どもが誕生しました。このときに初めて知ったのは、私自身の子どもの産み方・育て方の無知さでした。しかしこれは当然でもあります。現代社会では、子どもを産むことや育てることについての叡智やノウハウや感覚を教えてもらえる場所も機会もほぼありません。私が幸運だったのは、自分の無知さを知ったことと、それと同時に、いのちを産み・育むためのあらゆる叡智・ノウハウ・感覚を体系化してきた野口整体と出会えたことでした。

 

今日では自然療法として有名な野口整体ですが、私が師事した先生は産前産後・赤ちゃん・子どもへの操法を得意とされる稀有な野口整体の指導者であることは、巡り合わせといえるものでした。何よりも、この小平整体塾の高橋秀和先生との出会いを導いてくれたのは、いわゆる「手のかかった」私の息子のおかげであり、感謝し尽せません。病院を駆けずり回った日々が、まるで嘘のように、子どもの成長を心から安心できる子育てとなっていきました。

 

私にとって、野口整体は現象学的社会学の実践であり、とても腑に落ちるものでした。高橋先生は、超越的な立場から指導されることはなく、積極的に地平を共有し私自身が家族に整体できるよう、間主観的な指導してくれました。野口整体の始まりが高橋先生でなければ、もしかしたら私は野口整体をやっていなかったかもしれないと思っています。

 

それから、プロセスワークと出会うことになりました。しかし、プロセスワークそのものというよりも、プロセスワークを日本に導入した富士見ユキオ先生と岸原千雅子先生が関係療法を展開された時期に、おふたりに師事することができました。これもまた、絶妙なタイミングとしかいいようのないことでした。

 

関係療法は、個人の心について関係性を踏まえて捉える立場であり、また、人間の心の成長と発達、人間の主体化は関係性の中でなされると考える立場です。現代人の心性にぴったりと合い、現代人の心の悩みに結果を出すことを追究した関係療法は、私にとって現象学的社会学の実践でした。

 

私がこれらとの出会いに驚いたのは言うまでもないことです。なぜなら、大学で研究・教鞭をとっている間、私を日々悩ませていた「あなたは現象学をどうやって実践・実証するのだ?」という質問に、やっとレスポンスができたからです。

 

自己とは何か」「家族とは何か」「女性はどう生きるべきか」という、若き頃の私の疑問はやっと解かれていきました。ここでは省略しますが、その取り組みの日々はもちろん決して楽なものではなく、私自身の生まれ直しというような体験を何度も繰り返しました。少しずつ真の自由を生きられるようになり、生の意味というようなものを感じられるようになり、等身大で生きられるようになっていきました。

 

ある心理学者によれば、子どもに「僕はどこから生まれてきたの?」と聞かれたとき、「あなたは宇宙から生まれてきたんだよ」と応えると、子どもは安心すると言います。確かに、私たちの人生は、その始まりから終わりまで、神秘性に満ちています。神秘的な存在である人間が、その生をいきいきと充実させるには、合意的・合理的な現実社会との調和が不可欠です。

 

様々な学問領域を経験してきたからこそ、安定感・持続性・自律性のある総合的なセラピーをご提供できています。

 

日本では、まだ心理カウンセリングに躊躇のある方も多いようですが、当相談室では、個人心理学的カウンセリングとは次元の異なる関係カウンセリングを主におこなっています。一言で言うと、カウンセラーとクライアントとが二人三脚となり、ソーシャルワーク的機能をも持ちながら、一緒に問題や悩みの解決に取り組んでいく手法です。

 

このカウンセリングにおける〈言葉の力〉には、私自身、言葉の可能性をみるようで、また、人間にそもそもある自己治癒力に驚いています。霊長類研究者の山際寿一先生は、「人間は共感を拡げるために言葉をもったのではないか」と言われていますが、日々、人類の進化の秘密に触れるようです。 

 

あなたのお越しを、心からお待ちしています。

 

ご一緒に、考えていきましょう。 



2019.11.18 Monday